Vol.5 花粉症の季節到来!~治療編~ event_note2025.02.16 Vol.5 花粉症の季節到来!~治療編~ 花粉症治療の基本 花粉症治療には主に次の3つがあります。 ①原因となる花粉との接触を避けること ②症状を緩和するための薬物療法(抗ヒスタミン薬・ステロイド・免疫抑制剤など) ③体質を根本から改善するための長期的な薬物療法(舌下療法など) 花粉症になったときに、まず、ご自身分でできることは、①のマスクや帽子、手洗い、うがいなど体内に花粉を入れない工夫です。そして、次に必要となるのが、②症状を緩和するための治療薬です。今回は花粉症の治療薬について、眼科医の視点でまとめたいと思います。 花粉症治療の基本は「抗ヒスタミン薬」です。目や鼻のかゆみを引き起こすヒスタミンが、細胞にあるヒスタミン受容体にくっつくのを邪魔して、症状を抑える効果があります。点眼薬や眼瞼クリーム、点鼻薬、内服薬など、発症する場所によって種類を選びます。 抗ヒスタミン薬だけで症状が抑えられない場合は、ステロイド薬や免疫抑制剤などの追加が必要となりますが、市販薬で購入できる薬は、安全面から、抗ヒスタミン薬を含む抗アレルギー薬が殆どで、ステロイド薬は含まれていません。なので、症状の軽い方であれば市販薬で十分対応できると思いますが、重症の方や、花粉症なのか原因がはっきりしない方は受診されることをお勧めします。 花粉症治療薬 【点眼薬】 ①抗アレルギー点眼薬 主要成分である抗ヒスタミン作用により痒みを抑えるとともに、肥満細胞からの化学伝達物質の遊離を抑制してアレルギー反応を起こしにくくする薬です。アレルギー治療の基本で、目の症状の場合は内服薬より点眼薬の方がよく効きます。 ・アレジオンLX点眼薬 (エピナスチン塩酸塩LX) : 1日2回 コンタクトOK ・アレジオン点眼薬 (エピナスチン塩酸塩) : 1日4回 コンタクトOK ・パタノール点眼薬 (オロパタジン塩酸塩) : 1日4回 ・リボスチン点眼液 (レボカバスチン点眼液) : 1日4回 ※カッコ内は、後発医薬品(ジェネリック医薬品) ~アレジオンLX点眼薬0.1% について~ 2013年に販売された、最も新しい抗アレルギー点眼薬です。従来のアレジオン点眼液0.05%の濃度を濃くすることで、1日4回点眼から1日2回点眼となり、点眼の負担が軽減されました。また、防腐剤が入っていないため、コンタクトの上から点眼することができ、最近では最も多く処方されている抗アレルギー点眼薬です。価格が高いのが難点でしたが、今年、後発品の中でもAG(オーソライイズドジェネリック)と呼ばれる原薬、添加物、製造方法が全く同じ、エピナスチンLX点眼液0.1%が販売され、同じ品質でお求めやすくなりました。 ②ステロイド点眼薬 抗アレルギー点眼薬でも症状が治まらない時に追加する点眼薬です。強い抗炎症作用をもち、即効性があるため、症状が重い方に対して使用します。 ・フルメトロン点眼液 (フルオロメトロン点眼液) ・リンデロン点眼液 (サンベタゾン点眼液) ※カッコ内は、後発医薬品(ジェネリック医薬品) ③免疫抑制剤 他の点眼薬で症状が改善されない重症な方や、ステロイド点眼薬の継続が難しい方に使用する点眼薬です。免疫システムの働きを抑えることで、アレルギー反応や炎症を抑制する効果がありますが、他のウイルス感染症のリスクが高まることなどもあるため、慎重に使う必要があります。 ・タリムス点眼液 : 1日2回 ・パピロックミニ点眼液 : 1日3回 【抗アレルギー眼瞼クリーム】 2024年、世界で初めて販売されたクリームタイプのアレルギー性結膜炎治療剤です。1日1回、目のまわりに塗ることで、皮膚から吸収された薬の成分が結膜に浸透し、目のかゆみなどの症状を抑えます。 点眼が苦手なお子様には、寝ている間にそっと塗ってあげるだけで、点眼と同じ効果が1日中保てます。抗アレルギー薬の使い方の幅が広がると思われます。 ・アレジオン眼瞼クリーム0.5% : 1日1回 目のまわりに塗布 【ステロイド眼軟膏】 花粉症では、目の周りの皮膚にも痒みや腫れなどの症状を引き起こすことがあります。ステロイドには炎症やかゆみを即時的に抑える効果があり、皮膚の症状には眼軟膏が有効です。眼軟膏は痒い場所に合わせて、目の周囲から瞼の縁、場合によっては中まで塗布することが可能です。 ・ネオメドロール眼軟 : 1日2回 ・プレドニン眼軟膏 : 1日2回 【点鼻薬】 花粉症では、多くの場合で結膜炎と鼻炎が一緒に起こります。鼻炎を治療することで、結膜炎症状も改善されることが分かっています。両方の症状があるかたは、点眼だけでなく内服や点鼻薬を併用することが効果的です。 ・ナゾネックス点鼻薬 (モメタゾン点鼻薬) ・アラミスト点鼻薬 (フルチカゾン点鼻薬) ※カッコ内は、後発医薬品(ジェネリック医薬品) 【内服薬】 花粉症では、目や鼻の症状だけでなく、眠気や集中力の低下、頭痛、疲労感など全身の症状を引き起こし、生活の質に大きな影響を及ぼします。これらの症状がある方は内服薬による治療が効果的です。 内服薬は抗ヒスタミン薬が中心になり、眠気の少ない第2世代、第3世代の抗ヒスタミン薬が選ばれることが多いです。 《第2世代》 ・アレグラ (フェキソフェナジン塩酸塩錠) : 1日2回 ・アレジオン (アレジオン) : 1日1回 ・アレロック (オロパタジン塩酸塩) : 1日2回 ・クラリチン (ロラタジン錠) : 1日1回 ・ザイザル (レボセチリジン塩酸塩) : 1日1回 ・タリオン (ベポタスチンベシル酸塩錠) : 1日2回 《第3世代》 ・ビラノア : 1日1回 ・ルパフィン : 1日1回 ※カッコ内は、後発医薬品(ジェネリック医薬品) 文責:成尾 麻子 院長 【日本眼科学会認定 眼科専門医・視覚障害者用補装具適合判定医師・難病指定医】