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白内障①  白内障手術のメリットとデメリット

Vol.1 白内障①  白内障手術のメリットとデメリット

 

白内障は加齢にともなって、ほとんどの人が経験する目の病気です。50代頃から現れ、80代ではほぼ全ての人に何らかの症状があると言われています。白内障は少しずつ進むため、その症状に自分ではなかなか気づきにくいものです。

 「最近眼鏡をかけてもピントが合わない。細かい字が読みににくくなってきた。」

 「夕方になるとひと膜はったように曇ってみえにくくなる。」

 「夜空をみると、月が2つも3つも重なってみえる。」

 「車のヘッドライトがまぶしくて運転できない。」

などの日常生活の変化を感じ受診される方が多いです。すでに視力が低下している方から、視力は保たれていても水晶体の濁りが原因で生活に支障が生じている方など状況は様々です。

これらの症状を解消し、見え方をよくするのが白内障手術になります。

では、白内障手術のメリットとデメリットにはどのようなものがあるでしょうか?

 

   白内障手術のメリット   

①視力が回復し色彩が鮮明に!  ~生活の質の向上~

白内障手術では濁った水晶体を取り除いて、目の中に新たな人工のレンズを挿入することで視力が回復し、眩しさやもののダブりが解消されます。さらに、クリアなレンズを通すことで色本来の色彩を感じられるようになり、生活の質(QOL)の向上が期待できます。

 

②近視・遠視の屈折矯正と乱視の軽減 ~ライフスタイルに合った見え方を!~

白内障手術は屈折矯正のチャンスです。乱視を軽減し、遠視や近視を矯正することで術後にどの距離を見やすい目にしたいかということを自分で選ぶことができます。また、レンズの種類によっては眼鏡がいらなくなる場合もあります。ご自身のライフスタイルにあった見え方を相談し、適切なレンズを選ぶことが大切です。当院では1回の相談で決められない場合は2回、3回と時間をかけて納得のいくレンズを選んでいただくようにしています。

 

③眼底疾患の早期発見、早期治療と緑内障発作の予防

白内障が進行すると目の奥(眼底)が見えにくくなり、眼底疾患の発見や病気の進行の評価に支障を生じることがあります。白内障手術をすることで、白内障以外の眼の病気を早く発見し、適切な治療につなげることができるようになります。また、一部の方は白内障が進行することで突然眼圧が急上昇する「緑内障発作」を起こすことがあります。白内障手術により緑内障発作の予防ができます。

 

   白内障手術のデメリット   

①ピント調整機能が失われる

水晶体にはピントを調整する機能が備わっていますが、手術により人工のレンズに置き換えることによりその機能が失われ、ピントはあらかじめ設定した1つの焦点距離に集約されます。そのため、設定した距離以外を見るときは眼鏡での矯正が必要となります。ただし、60歳以上になる水晶体のピント調節機能が衰える、いわゆる「老眼」が生じていることから、術後の新たなデメリットとして感じられることは少ない印象です。術後に裸眼で見やすくなる距離と併せて見にくくなる距離につても、術前にしっかりと相談させていただきます。

一方、複数の距離へのピント調整が可能な多焦点レンズは眼鏡や老眼鏡を必要としない裸眼での生活を期待でしますが、スムーズなピント調整は難しく、慣れるまで時間を要することが多いです。また、光が眩しく感じられたり見え方の質が落ちてしまうことがあります。

 

②術後の度数ずれ

眼内レンズの度数の選択により、術後は近くにでも遠くにでもピントを合わせることができます。眼内レンズの度数は術前検査によって決めますが、稀にレンズ挿入後の度数にズレが生じることがあります。術直後から起こる場合も、術後しばらくして徐々に生じる場合もあります。もちろん眼鏡をかければ矯正できますが、裸眼での見え方が術前に想定したものと異なる場合があります。

 

③術中・術後の合併症

近年白内障手術は安全性が高く、日帰りで行える一般的な手術となっていますが、手術である以上レンズが入らない等の術中のトラブルや感染(眼内炎)といった合併症のリスクがあります。医療機関としては「消毒や滅菌の徹底」と「清潔な環境の整備」「術中に合併症が生じた際の対策」が必要です。一方、患者さまには術前に十分な説明を受けていただき手術のリスクについてご理解していただくこと、そして「術前・術後の点眼」や「洗髪や洗顔など術後の生活制限」「術後検診」にご協力いただく必要があります。

 

まとめ

白内障は誰もが患う病気です。白内障手術により得られるものはとても大きく、手術が安全に行える現在の医療環境においては、皆さまの頭の片隅に「いつかは自分も白内障手術をするのだろう」との思いがあるのではないでしょうか?

いまや白内障手術には単に「見えるようになる」だけから、「どのように見えるようになるか、それによりどのような生活を送れるようになるのか」といったことを求められるようになっています。

白内障で生活に支障を生じるようになったら、基本的には手術を受けられた方がよいと思いますが、手術の特性を十分ご理解いただき「手術を受ける時期」とご自身のライフスタイルに合った「眼内レンズ選び」を適切に行っていただくことが重要であると考えます。

診療においては単に視力だけでなく、「日々の見え方」や「生活で困っていること」について伺い、手術の時期を患者様と一緒に相談させていたただいています。そして、手術を決められた際にはその不安を少しでも軽減できるよう、十分な説明と患者様のニーズに合った眼内レンズを選ぶよう心がけています。見え方に不安を感じられた際にはお気軽にご相談ください。

 

 

 

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