カメラに例えると、透明なレンズにあたる水晶体が白く濁ってしまう疾患が白内障です。 白内障手術は、この濁ったレンズを取り除いて、新たな人工のレンズと入れ替える手術になります。これにより視力を取り戻し、物がはっきりと見えるようになります。また、レンズの選び方しだいで近視や遠視の矯正や、老視や乱視の軽減も可能となります。麻酔は局所麻酔で行い、痛みはほとんどありません。手術の時間は通常10~15分程度となります。 白内障の手術は、日本国内においては毎年150万件以上行われている一般的な手術で、術式も確立された比較的安全性が高い治療となっています。そのため、最近では、白内障手術は日帰りで行うことが主流となっています。当院でも、日帰りでの白内障手術を行っていますが、目に重篤な合併症をお持ちの方や、日帰りでの手術が難しい方に関しましては、近くの病院をご紹介させていただいております。
白内障について くわしくはこちら
現在の目の症状や日常生活への影響などについて伺います。 また、治療中のご病気や飲んでいるお薬などについても伺います。
白内障の程度を確認し、手術の必要性や時期についてご相談します。 手術のご希望がありましたら、日程を決め、術前の検査へと進みます。
目の形状や長さの計測など、手術に必要な検査を行います。 また、手術の際に支障となる病気がないかを判断するために、採血検査を行わせていただいております。
手術の内容やリスク、費用などについて分かりやすくご説明します。 手術で挿入する眼内レンズの選び方により、術後の見え方は大きく異なります。 患者さまのご希望を伺いながら、眼内レンズについてご相談します。
手術前後の生活上の注意点や点眼などについて、スタッフから詳しく説明があります。
手術は点眼麻酔による局所麻酔で行い、手術時間は通常10~15分程度です。 手術後は、眼帯を付けけたままご帰宅いただきます。翌日の診察まで外さずに安静にお過ごしください。
白内障の手術の際は、点眼麻酔を行うため、手術中の痛みはほとんどありません。まず、黒目と白目の間を2~3mm切開します。次に、濁った水晶体を包んでいる袋の前面を切り取り、そこから専用器具を挿入し、超音波で濁った水晶体を砕いて、きれいに吸い出します。残った袋の中に眼内レンズを挿入して終了です。
白内障手術では、水晶体の代用として人工眼内レンズを挿入します。白内障は、水晶体が濁って対象物が見えにくくなります。このため、水晶体を除去して人工眼内レンズを挿入する白内障手術を行います。眼内レンズには、ピントが1点で合う単焦点眼内レンズと複数の距離でピントが合う多焦点眼内レンズの2種類があります。また、乱視矯正が可能なトーリック眼内レンズもあります。
遠方・中間・近方のどこか一つにピントを合わせた眼内レンズです。ピントを合わせた範囲内の視野は鮮明に見ることができます。ただし、1点に焦点を合わせるため、遠くにピントを合わせた場合は手元をみるのに老眼鏡が、近くにピントを合わせた場合は遠方を見るのに眼鏡が必要になります。 適した眼内レンズを選ぶには、患者様が生活の中でどの距離の見え方を一番必要としているのか、または何を一番見たいのかを考えることが大切です。患者様のライフスタイルや元の目の状態に応じたレンズを選択します。
単焦点眼内レンズを挿入する白内障手術は、健康保険が適用されます。
遠方から近方まで広い範囲にピントが合わせられる眼内レンズです。生活場面のほとんどを裸眼で過ごすことができるようになり、眼鏡の煩わしさから解放されることが望めます。 一方で、多焦点眼内レンズには「ハロー・グレー・コントラスト感度低下」などの単焦点眼内レンズでは生じにくいいくつかのデメリットがあります。目の状態やライフスタイルによっては単焦点眼内レンズをお勧めさせていただく場合があります。
単焦点眼内レンズ(遠距離焦点)
ピントが合う距離は1か所
多焦点眼内レンズ
遠方・中間・近方の距離にピントが合う
多焦点眼内レンズを挿入する白内障手術は、選定療養が適応されます。
多焦点眼内レンズについて はこちら
手術翌日に診察をします。 来院されましたら、スタッフが眼帯を外し、診察後から術後の点眼を初めていただきます。 ご自身のみでの洗髪・洗顔は、1週間程度お控えください。 手術後は以下のスケジュールでご受診いただいております。 手術翌日→3日後→1週間後→2週間後→1か月後→3か月後 手術の経過には個人差があります。上記のスケジュール以外にも受診いただく場合もありますので、医師の指示に従って受診してください。
※ 手術後の経過には個人差があるため、経過によっては、個別に指示させていただく場合があります ご不安なことなどがありましたら、お気軽にお尋ねください
昨今の医療の進展によって、白内障手術の安全性が高くなりました。ただし、手術における合併症は全くないわけではありません。 白内障手術後は感染予防のため、目を直接触ったり、こすったりしないでください。 また、手術後の点眼は決められた本数を決められた回数で行ってください。
非常に稀ですが、重篤な合併症です。術後数日以内に発症することが多く、目の痛みや充血を伴い、突然急激に見えにくくなることがあります。白内障手術後に、目の激しい痛みや充血・かすみなどの症状がある場合は、速やかに当院までご相談ください。
手術後数か月から数年経過した後に、再び白内障にかかったかのように白くかすんで見えにくくなることがあります。これを「後発白内障」といい、眼内レンを包んでいた袋(水晶体嚢)が、術後少しずつ濁ってくることで発症します。 白内障手術後の約2割の方に発症するとされており、決して稀な合併症ではありませんが、レーザー治療により、視力は元の状態へと回復します。レーザー光線を照射し、濁った水晶体嚢に穴を開けることで、光が再び眼底までスムーズに通るようになり、見えやすくなります。レーザー治療は点眼薬による局所麻酔で行い痛みはほとんどありません。時間は5分程度で終わります。
嚢胞様黄斑浮腫と呼ばれ、術後早い時期に起こり網膜が浮腫みます。視力低下が生じるため、点眼薬やステロイド薬注射で症状を改善していきます。
手術までに必要な準備はありますか?
手術前の準備として点眼や内服などがあります。内容やタイミングについては術前のオリエンテーションでお伝えします。事前に、ご加入の医療保険・手術給付金などをご確認ください。
手術が決まってから手術日までどれぐらい通院しますか?
白内障手術を行うと決定してから、合計2回通院が必要です。通常、手術前検査と手術前最終診療を行います。検査の結果次第では3回の通院となる場合があります。検査前検査を行う際には、手術におけるスケジュールを作成してお渡しします。
手術当日は、時間は決まっていますか?
ご来院の時間や手術における所要時間などは、手術日近くになりましたら、ご連絡させて頂きます。
手術当日の付き添いやお迎えは必要ですか?
手術後は、片目で歩かなければなりません。可能でしたら、ご家族などの付き添いやお迎えをお願いしております。付き添いやお迎えが不可能な場合は、タクシーなどをご利用頂き、十分お気をつけてご帰宅ください。自動車やバイク・自転車の運転はお控えください。
1人暮らしをしています。術後は大丈夫でしょうか?
術後は、タクシーなどを利用してご帰宅ください。普段からご自身で身の回りや服薬などを行っている方でしたら、問題ありません。術後の通院がご自身だけでは難しいという方には、入院設備の整った医療機関をご紹介させていただいております。
手術の痛みはありますか?
点眼麻酔を行っておりますので、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。
手術の所要時間はどのぐらいですか?
術前の準備で1時間程度、手術自体は10~20分程度の所要時間です。術後はご要望があれば院内でお休み頂くことも可能ですが、すぐにご帰宅いただけます。
眼帯は手術後どのくらいの期間つけますか?
薄い金属の眼帯を手術直後から翌日の診察までつけて頂きます。翌日の診察以降、外出の際は保護眼鏡のご使用をお勧めしております。
手術後の痛みはありますか?
個人差がありますが、チクチク・ゴロゴロした違和感覚えることがあります。我慢が出来ないほど強い痛みになることはありません。また、手術後は痛み止めの内服薬も処方しております。
文責:成尾 麻子 院長 【日本眼科学会認定 眼科専門医・視覚障害者用補装具適合判定医師・難病指定医】
遠方から近方まで広い範囲にピントが合わせられる眼内レンズです。生活場面のほとんどを裸眼で過ごすことができるようになり、眼鏡の煩わしさから解放されることが望めます。当院では、薬事承認された多焦点眼内レンズを使用しており、選定療養の適応となります。
多焦点眼内レンズでは、光の周りに輪がかかったように滲んで見える「ハロー」や、光が花火の様にギラギラと眩しくみえる「グレア」が生じることがあります。多くは夜間に生じ、対向車のヘッドライトや街灯の光が強烈に感じることがあるので、日常的に運転する方や見え方がとても気になる方は、慎重にレンズをご選択いただくことをお勧めいたします。
コントラスト感度とは映像のシャープさや、濃淡を見分ける能力のことを言います。 多焦点眼内レンズでは、目に入ってきた光を遠方・中間・近方に振り分けてみるため、それぞれの距離では正常よりやや少ない光で見なくてはいけません。このために、コントラストが低下します。一方で単焦点レンズは、目に入ってきた光を振り分けることなく使用するため、ピントは1か所にしか会いませんが、コントラストは高くよりくっきり見えます。
コントラスト感度の低下
手術直後から、すぐによく見えるとは限りません。見え方に慣れるまで数週間~数ヶ月かかることがあります。多焦点眼内レンズは常に遠くにも近くにもピントが合っており、脳が見たいところだけに意識を集中できるようになり、それ以外はきにならなくなるまでに時間を要します。最終的に適応できない方が稀にいらっしゃいます。
全ての距離でくっきり見えるわけではありません。見えにくい距離は無理せずに眼鏡を併用しましょう。
多焦点眼内レンズをご希望されても、生活スタイルや患者様の眼の状態によっては単焦点眼内レンズをお勧めする場合もございます。予めご了承ください。
連続焦点型 近方(35㎝)・やや中間(50㎝)・遠方 焦点深度拡張型と2焦点型の特徴を合わせたハイブリット型回折デザインレンズです。コントラスト感度が良好なため、遠方から手元まで自然な見え方が期待できるレンズです。読書や料理、パソコンをはじめ野外での運動をされる方にむいています。また、3焦点型と比べて、40cmより近方での良好な裸眼視力が期待できるため、日常生活でなるべく眼鏡を装用したくない方にお勧めできるレンズです。ただし、グレーやハローが若干感じられやすい特徴があり、夜間の運転をされる方には注意が必要です。乱視矯正タイプもあります。
遠方から近方40cmぐらいまでが見やすく、日常生活で重要な60㎝付近の見え方を重視したレンズです。遠方を見るゴルフなどのスポーツから、パソコン作業や料理などの中間距離、読書などの手元の作業まで日常生活で必要とされる距離が快適に見えるレンズです。特に中間距離において優れているため、パソコン作業が多い方に特にお勧めできます。乱視矯正タイプもあります。
クラレオン ビビティはアルコン社から2023年に発売された最新の眼内レンズで、従来の多焦点眼内レンズとは異なるコンセプトのレンズになります。「波面制御型焦点深度拡張レンズ」いう新しい技術が取り入れられ、グレーやハローなどの多焦点眼内レンズ特有のデメリットを軽減し、単焦点眼内レンズと同等のクオリティのよい見え方を維持しております。遠方から中間、実用的な近方距離まで切れ目なく見える設計で、スポーツや夜間の運転をされる方にもおすすめできるレンズです。ただし、読書など近方の細かい作業には眼鏡が必要となります。乱視矯正タイプはありません。
2020年から、国内承認を受けた多焦点眼内レンズを用いた白内障手術において、選定療養の制度が利用できるようになりました。選定療養では、手術自体は通常の単焦点眼内レンズと同様に保険適応となり、多焦点眼内レンズを選択したことで増える眼内レンズ費用と検査料の追加分を自費でお支払いいただきます。自由診療では全額自己負担となる手術費用の一部を軽減することができる制度です。 当院では、選定療養制度を用いた治療が可能となります。